乳頭から出る分泌液に血液が混じっている状態を「血性乳頭分泌」といいます。
乳頭から分泌液が出ること自体は、必ずしも異常とは限りません。授乳後しばらくしていても、白色、透明の分泌はホルモンバランスの変化など生理的なもので心配のないことが多いです。一方で、分泌液が赤色や茶色、黒色などいわゆる血の色の場合は、乳頭に近い乳管に何らかの病変があるサインである可能性があります。
「ブラに血がついていた」
「乳首から赤い液が出た」
このような症状で受診される方は少なくありません。
ただし、血性乳頭分泌=乳がん、というわけではありません。
そもそも、乳腺はミルクを作る「小葉」と作られたミルクを乳頭にまで運ぶ「乳管」からできています。通常、授乳期はミルクが同時に多数の乳管から分泌されるため、乳頭を正面から見ると十数個の穴からミルクが出てきます。乳がんの多くは最初、この一本の乳管の中に発生するため(小葉の中にできることもあります)、乳がんで血性分泌が出る場合は、授乳のように多数の穴からではなく一個の穴から血が出ます。ただ、乳がん以外でも、このように一個の穴から血が出ることがあります。
実は血性乳頭分泌の原因として最も多いのは「乳管内乳頭腫」という良性のできもので、乳管の中にできたポリープ状の組織からの出血によって血性の分泌が起こります。
診察では、まず分泌がどちらの乳頭から出ているか、片側の乳頭からなのか両側乳頭からか、決まった一つの穴(乳管口)から出ているのか、複数の穴から出ているのかを視触診で確認します。
乳頭近くのある部位を押すと血が出るとなると、その近辺に責任病変があると予想し、エコーで入念に病変を観察します。
乳がんをより疑うのは以下の特徴です(全てを満たしてても絶対乳がんとも限らず乳頭腫のことも多いです)。
•片側乳頭だけから出る
•1本の乳管から出る
•自然に出てくる(押さなくても出る)
•赤色・茶色・黒っぽい分泌
•繰り返し続く
検査としては、エコー検査で乳管の拡張や内部の腫瘤の有無を確認し、必要に応じて乳房造影MRIなども行います。
原因が乳管内乳頭腫など良性のものであれば経過観察となりますが、血性分泌が続く場合や原因部位がはっきりしている場合には、原因となっている乳管とその周囲の組織のみを切除する「乳管腺葉区域切除術」という手術を行うこともあります。手術により、血性分泌が止まること、病変の確定診断ができるというのがメリットです。この手術は血が出る穴をごく細い針金のようなもので拡張して病変にアプローチするため、血性分泌が止まっている症例では手術ができません。
エコーでもMRIでも病変が特定できず、血性分泌が続くため手術をすると小さな非浸潤癌が判明した症例もあります。
実際の乳腺外来では、ブラを新しいものに変えて生地が肌に合わないためや、アトピーの方、生理前の皮膚がデリケートな時期に乳頭の湿疹ができて掻いてしまい、乳頭分泌というより、掻くことで乳頭皮膚がめくれて血が出てる方もおられます。これは乳房内から湧き出る分泌ではなく、あくまで乳頭乳輪の皮膚からの出血で厳密には乳頭分泌とは言いません。
先ほどに挙げた特徴の血性分泌の方は怖がらずに乳腺外科を受診くださいね。