石灰化で要精密検査に。乳がんの可能性は?
乳がん検診で石灰化で要精密検査になる方は多いです。
心配で検索してこちらにたどり着いた方もおられると思いますが、石灰化イコール乳がんではありません。まずは落ち着いて読み進めて下さい。
マンモグラフィで、乳腺の中に砂のようなごく小さな白い点としてうつるのが「石灰化」です。これは乳腺の組織にカルシウムが沈着したもので、粒の小さな石灰化はエコー検査では見つけにくく、マンモグラフィだからこそ発見できる所見です。粒の大きな石灰化はエコーでも検出できますが良性であることがほとんどです。そもそもマンモグラフィは小さな石灰化を検出しやすくした乳房専用のレントゲン装置なので、小さな石灰化は断然マンモグラフィのほうが検出しやすいです。ただ、石灰化イコール乳がんを意味するわけではなく、実際には乳腺症など良性の変化に伴って生じる石灰化のほうがはるかに多くみられます。
石灰化の判定とは
石灰化にも段階があり、マンモグラフィの判定は以下の5段階となります。
- 1.正常(石灰化なし)
- 2.石灰化はあるけど、良性
- 3.おそらく良性の石灰化だが、絶対大丈夫とは言えない
- 4.乳がんの可能性が高い石灰化
- 5.乳がん
3以上が要精密検査となります。3~5は石灰化の「形」と「分布」から決まります。大きく丸い、左右対称に散らばっている、広い範囲にまばらにある、皮膚や血管に沿っているといった石灰化は良性の可能性が高く2と判定されます。一方で、小さく淡い、砕けたように不揃いな形をしている、狭い範囲に集まっている(集簇性)、乳頭に向かって線状や分岐状に並んでいる、乳管の走行に沿って区域性に分布しているといった所見がある場合は、下記のイラスト図のように右にいくほど乳がんに伴う石灰化の可能性が高くなります。
精密検査が必要な石灰化への実際の検査手順
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まずは過去のマンモグラフィと比較します。
今回の要精密検査となる以前に、マンモグラフィ撮影歴があれば過去画像と今回のと比較します(他院での撮影のものであれば、CDとして取り寄せせて当院へご持参いただきます)。マンモグラフィは比較が非常に重要です。たとえば一か所に集まった小さな石灰化でカテゴリー3として要精密検査となっても、何年も前から同じ部位に石灰化があり、ずっと変化がなければ良性の可能性が高く経過観察します。逆に、以前には存在してなくて今回出現してきたり、以前から存在しているが徐々に石灰化が増悪してきた場合は病理検査で乳がんなのかどうか確認したほうがいい確率が高まります。また今回の撮影が人生初マンモグラフィであったり、過去に撮影歴があっても大昔のため保存されておらず取り寄せ困難な場合は比較ができません。 -
次に視触診とマンモグラフィの石灰化に相当する部位にエコーで対応する病変がないかを確認します。
ただし乳がんの可能性があるような小さな石灰化はエコーでは検出できないことも多いです。 -
石灰化が乳がんかどうかの確定診断は病理検査(針生検や乳腺腫瘍画像ガイド下吸引術)で行います。
石灰化病変をエコーで確認できれば、エコーで位置を確認しながら病理検査を行うことができます。エコーでは石灰化病変が検出できない、マンモグラフィでしか検出できない石灰化については、マンモグラフィで正確に位置を特定しながら組織を採取する「ステレオガイド下マンモトーム生検」という検査が必要になるため、その設備がある提携先の医療機関へご紹介しています。
また乳房造影MRI(造影剤という点滴を使いながら行うMRI)を行うこともあります。通常乳房造影MRIは、乳がんと診断がついた場合に、手術の術式を決定するために乳がんの広がり具合を評価するのに使いますが、エコーでは検出できない乳がんを造影MRIで検出できることがあります。ただし、乳房造影MRIは病変を拾い上げる能力は高いのですが、おとなしすぎる初期の乳がんは検出できないこともあります。また乳がんでない良性病変を拾い上げることもあります。ですので、マンモグラフィで精密検査となった石灰化で、エコーでは検出できない場合の乳房造影MRIはあくまで補助的な診断として用います。乳房造影MRIで異常なしだからといって、「おとなしい乳がんまでもが無い」という結論にはなりません。(もちろん、すべての乳がんを100%確実に検出できる画像検査というものは存在しないのですが)
そもそもエコーや乳房造影MRIでは検出できず、マンモグラフィでしか検出できない石灰化の乳がんというのは非浸潤癌という初期の乳がんのことが多いです。非浸潤癌は術後10年の乳がん死亡率は0.8~0.9%と、適切に治療すれば寿命を縮めるがんではありません。
まとめると、要精密検査となった石灰化は、以前のマンモグラフィがある場合は比較し、視触診、エコー、場合により乳房造影MRIも組み合わせて、石灰化の程度や経過からも総合的に①現段階で病理検査をするのか、②経過観察として6か月後に再度マンモグラフィを行い比較していくのか(増悪するようならその時点で病理検査を行う)、を慎重に判断します。
石灰化を指摘されると「乳がんではないか」と不安になる方もおられますが、ステレオガイド下マンモトーム生検をしても、結果は良性であることが少なくありません。
ステレオガイド下マンモトームはできる病院が限られており、また通常の検診マンモグラフィなどの撮影とは違い、圧迫されている時間も長いので、患者さんにとっても少し負担のあるハードルの高い検査となります。「要精密検査の石灰化」と言っても、乳がんを強く疑うものから乳腺症を疑うものまでさまざまです。患者さんも、「できればしんどい検査はしたくない」という方もおられますし、「多少しんどくても検査して白黒はっきりつけておきたい」というスタンスの方もおられます。また、ステレオガイド下マンモトームを実際に試みても石灰化の位置によっては検査ができない場合もあります(乳房の深い部位だと検査困難なことがあります)。その方の石灰化に応じた個々の対応が必要となります。
怖がらずにぜひ精密検査を受けに来てください。
