乳がん手術までに患者さんがするべきこと
手術の術式がスムーズに決まった方、悩みに悩んで決められた方、いろんな患者さんがおられると思います。
今回は、できれば万全の体制で手術に臨んでほしいので、手術日までに患者さん自身に気を付けてほしいことをまとめます。
術後合併症の一つに、手術部位の感染があります。
手術した部位に細菌が感染して赤くなって熱をもち、痛みを伴います。膿がたまることもあります。
手術部位の感染により、場合によっては傷がきれいに治らなかったり、感染の治療が長引くと手術後に行う治療(放射線治療や抗がん剤治療など)の開始が遅れてしまうこともあります。
手術部位の感染のリスクを下げるために以下を実践してください。
①禁煙
喫煙により全身麻酔や手術の合併症が確実に増加します。
手術部位が細菌感染を起こしやすく、また傷の治りも遅らせるだけでなく、術後に咳や痰が増えたり、気道が腫れたり、喘息や肺炎になりやすい状況になります。
電子タバコも禁煙してください。
また、ご家族など周囲の方の喫煙による煙を吸ってしまうのも、ご自身が喫煙しているのと同じ影響が出るため気を付けてください。
手術までの禁煙期間は長いほどいいのですが、4週間以上を目指してください。もし手術まで4週間ないなら、短期間の禁煙でも効果があるので必ず禁煙してください。私の患者さんには、「これを機に禁煙して丸ごと健康になりましょう」とお伝えしています。
②血糖コントロール
手術前後の高血糖が手術部位の感染リスクを高めます。
糖尿病患者さんは血糖を良い状態に保てるように、早めに糖尿病の主治医に相談してください。
③体調管理
コロナであれ、インフルであれ、他の風邪であっても、手術当日に高熱が出ているような状態だと乳がんの手術は延期となります。
また免疫力の低下が手術部位の感染のリスクを高めます。
しっかり食べて、しっかり寝て、できるだけ免疫力が低下しないようにすることが重要です(ちなみに免疫力アップのためのサプリメント等は不要です)。
色々不安や心配で、ネットで他の乳がん患者さんのブログを読まれることも多いと思います。注意していただきたいのは、患者さんそれぞれのステージ、タイプ、悪性度などの病状や、乳房内の乳がんの位置、乳房の形、大きさも異なります。ブログに書かれている患者さんとご自身は全く同じ状況ではないため、あくまで参考程度に留めておくことをお勧めします。
思い悩んでストレスとなって抵抗力が落ち、直前に帯状疱疹になり手術が延期となった患者さんもおられます。
不安が強い方にとっては気の持ちようが難しいこともあると思います。
手術だけで乳がん治療が完結する方はごく一部です。手術は治療の一つの過程で、病理結果によって決まる薬物治療や、場合によっては放射線治療が術後に続きます。長期戦にはなりますが、まずは手術だけに集中し無事に合併症なく退院できるように、ご自身の体調を整えましょう。手術後、入院中の時間を暇に感じる方もおられます。忙しくて普段読めなかった本やNetflixなどで見たかった映画などを検討するのもいいと思います。
もちろん上記内容に注意していても、ある一定の確率で手術部位感染やそれ以外の合併症も起こりえますが、できる限り下げられるリスクは下げて、ベストの体調で手術を受けていただきたいと思います。